モーガン家別荘
日米の文化を尊重した快適な空間(移築再生)
群馬県利根郡昭和村→同県利根郡みなかみ町
設計・施工:㈲建築工房無有
設計者から
建築主のお一人がアメリカ人なので、当初から文化の違いを共有することができるか否かが成功のポイントであると感じていた。設計にあたっては、蔵の外観を損なわず、いかに建築主の望む快適な居住空間を造るかにエネルギーの大半を費やした。
外観を優先したため、内部の間取りに先行して窓の位置と大きさを決定した。壁のバランスを壊さないように同一サイズ・同一の横滑りサッシを等間隔に配置した。窓まわりの縁取りを広く深くしたことで蔵のイメージを再現できたと思う。1階は車庫兼ホビースペース、2階を居住空間にするためには、解体した13尺の柱をそのまま利用したのでは階高が不足してしまう。そこで壁を兼ねる基礎を法律上許される最大高に設定して階高を稼いだ。当然再生前の蔵より高くなったが、「まわりの風景に溶け込んでいる」と建築主から評価していただいてホッとしている。
内部に関しては、別荘利用でも事務所としての活用が多いので、日常生活臭を表に出さないように配慮した。たとえば、キッチンは格子の建具で隠す、トップライトのコントローラーを収納内部に設置する等々。施工では、梁間方向を広げた設計や、屋根部分が傷んでいたため新規に作成したことなどで予想以上の困難な仕事になり、工期が長くなってしまった。しかし、蔵の一つの完成形を示すものができたし、日米それぞれの文化を尊重した造りになったと確信している。(河合純男)